† 神秘主義 †

ナグ・ハマディ文書『ゾーストリアノス』における、「世界の再創造」説の展開


ナグ・ハマディ文書の一つであり、グノーシス主義セツ派に属する重要文献である『ゾーストリアノス』を読んだ。
写本はコプト語のサヒド方言で記されており、保存状態は最悪の部類に属し解読は困難であることが知られる。
ゾーストリアノスとは、ゾーロアストロス(ゾロアスター)の曽祖父と系譜学的には位置付けられる。
本書は内容的にはキリスト教というよりも、ユダヤ教黙示文学に近接している。

解読は困難であるが、その内容はプロティノスの霊魂の三層構造説の「先取り」である。
プロティノスに帰せられる霊魂の階層構造説は、実は中期プラトニズムによって既に先取りされていたという。
その内容であるが、『ゾーストリアノス』では、至高の神的存在は「見えざる霊」と呼ばれる。
この霊的超越は、世界を形成する根源的な三つの力を有しており、それが以下である。

・存在
・叡智(至福)
・霊魂(生命)



この三つの力能が世界創造に深く関与したとされる。
興味深いのは、この「見えざる霊」は、ある世界の「エイドーロン(模像)」を見て、そのエイドーロンに従ってこの世界を創造した点である。
つまり、創造の第一の起源は、既に廃墟化されているというデリダ的な「起源の代補」の構造が垣間見えるのである。

「彼(神)は、模像の模像にしたがって世界を創造した」



写本のこの言葉は、創造が実は「再創造」であり、起源に先立つ世界が存在したことを暗示させる。
同様の、『ゾーストリアノス』的な世界の「再創造」説の、現代思想上における展開はドゥルーズの初期論稿『無人島』の「無人島の原因と理由」でもテーマとして思考されている。
起源が既に第二のもののシミュラークルなのだ。
この思想は、プロティノスを本書が先取りしていること以上に重要である。
同時に、写本の劣化が悔やまれもする。



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