† 文学 †

「君を愛することの喜びを何度も何度も自分にいい聞かせています。いつまでも君を愛した喜びを語る僕の言葉を、これから先君は何度も聞くことでしょう」

アンゴスチュラ・ビターズな君へアンゴスチュラ・ビターズな君へ
(2008/11)
高泉 淳子

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センスの良いオサレな美食文学♪


彼氏をフランス料理の美味しいお店に連れて行きたいと思っている女性には、必読の小説だと思う。
文章も読みやすいし、もとは高泉淳子さんのシリーズ舞台「ア・ラ・カルト」を彼女自身が小説化したものだ。
この小説を読んだ後では、ディオールオムのシャツについている「蜜蜂」のさりげないマークまでもが、実は小説空間にオサレに散りばめられるアクセサリーであったことに気付かされる。
私の彼女は甘いもの大好きなのだけれど、もう甘いものには目がないというような女性たちのために書かれた珠玉の小説といっても良いかもしれない。

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「僕のそばにいてほしい」とか、「世界中に木を植えたい」といった印象的な言葉も記憶に留めておきたいものだ。
タイトルになっているAngostura bitters(アンゴスチュラビターズ)というのが何かというと、リキュールのことなのだ。
作中でも紹介されているように、「スコッチに入れたらロブロイ、ジンに入れたらピンクジン、シャンパンに入れたらシャンパンカクテル、ウィスキーに入れたらカクテルの女王マンハッタンになる」という、まさに魔法のリキュールだ。
この作品には、アンゴスチュラビターズ以外にも、数々の珠玉の魔法が登場する。
それらが、男性と女性の「恋愛」をカジュアルに描いたやさしい表現で、けして気取らずに繊細に綴られていく。
本当にセンスの良さが伝わってくる作品だ。
それは例えば、オサレな喫茶店とか、美容室の待合とか、そんな陽射しの綺麗な場所にそっと置かれているとマッチしているような存在なのである。

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「コースになさいますか? それともアラカルトで?」
そう尋ねられたら、メニューをほとんど見ずに「シャンピニオンのブルテで」とか、「牛肉のシャルトリューズでお願いします」などという作法は、私も身につけていけたらなと思う知識だ。
本書はレストランを舞台にした小説なので、随所にオサレで場を和ませるような言葉が出てくる。
「シャンピニオンのブルテ」(マッシュルームのスープ)。
「牛肉のシャルトリューズ(牛肉をリキュールで)」。
「子牛のすね肉のア・ラ・バール(蒸し肉)」。
などなど、料理名をきくだけで「卓越化」しているのがわかるような美味しい料理が登場する。

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デザートで彼女にもいつか食べさせてあげたいと思ったのは、「バナナのブランデーマリネ」や、「リンゴのキャラメリゼ・カトルカール」だ。
これらはその名前自体が既にデザート級の響きを持っていて、読んでいるだけで心地よかった。
こうした語感と触感、それに空間の雰囲気を大切にする女性的な感性は、男性である私にとって本当に素晴らしいものだと思う。
作中の会話で登場した映画の『エディット・ピアフ 愛の讃歌』や、サリンジャー、チェット・ベイカーなど、言及されている文化的なものも作品に巧く溶け合っていた。
特にチェット・ベイカーには作者の思い入れが強いようで、私もYou Tubeで早速音楽を拾ってみたくらいだ。
男が近付いてきた時に女性が断りたい場合、一番有効な台詞として登場する「あなたに抱かれる絵が思い浮かばない」にはおかしくて何故か笑ってしまったけれど、「フランス料理」や「レストランの雰囲気」を綺麗な言葉で味わって、なおかつ料理についても勉強してみたい方にはお勧めだ。

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なにげない箇所だったのだけれど、レストランで相手の男性が洩らした何気ない言葉「世界中に木を植えたい」という言葉と、「僕のそばにいてほしい」という言葉に、私は強く励まされた。
この言葉は、もしかすると同義語なのかもしれないな、なんて……。


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