† 文学 †

Edgar Allan Poe 《To F--》 エドガー・アラン・ポー「F――に」


The Fall of the House of Usher and Other Writings: Poems, Tales, Essays, and Reviews (Penguin Classics)The Fall of the House of Usher and Other Writings: Poems, Tales, Essays, and Reviews (Penguin Classics)
(2003/04/29)
Edgar Allan Poe

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To F--
(1835)

by Edgar Allan Poe
(1809-1849)

Beloved! amid the earnest woes
That crowd around my earthly path-
(Drear path, alas! where grows
Not even one lonely rose)-
My soul at least a solace hath
In dreams of thee, and therein knows
An Eden of bland repose.

And thus thy memory is to me
Like some enchanted far-off isle
In some tumultuous sea-
Some ocean throbbing far and free
With storms-but where meanwhile
Serenest skies continually
Just o'er that one bright island smile.



「F――に」



愛しい人よ! 私の地上の行路に群がり
ひしひしと迫って来る苦難のただ中で
(嗚呼! 一本の淋しい薔薇さえ
生まれていない 荒れ果てた その小径)
私の魂は貴女を夢見て 何はあれ慰めを汲むのです、
のどやかな憩いの地 エデンの園が
そこにあるのを感じながら

だからこそ 貴女の思い出は 私には
浪さわぐ海の 沖に浮かぶ
魔法の島かと思えますーー
嵐にさかまき 果てしも知らず奔騰する
大海原ーーだがしかし あそこ
あの輝かしいひとつの島の上でだけは
この上もなく晴れた空が 微笑み続けているのです。





「評」

*訳文は戦後日本詩を代表する詩人の一人である入澤康夫による。この詩はポーがオズグット夫人に献げたもの。
特に「エデンの園」を愛しい夫人との思い出に重ねている表現は瑞々しく美しい。My soul at least a solace hath/In dreams of thee, and therein knows/An Eden of bland repose.(私の魂は貴女を夢見て 何はあれ慰めを汲むのです、/のどやかな憩いの地 エデンの園が/そこにあるのを感じながら)。theeは古語で「汝に(を)」のように本来目的格で用いる。「汝の夢の中、私の魂は慰めを得る、静寂の地エデンがそこにあるのを感じながら」。reposeという言葉が「エデンの園」と「夫人の思い出」を表現するための重要な語彙になっている。reposeには「静寂、平安、調和、休養」などの落ち着いて静かな意味が込められている。これは激しく情熱的であった記憶というよりも、穏やかで紳士的な平安を感じさせる関係であったことを髣髴とさせる。
some enchanted far-off isleーーここも極めて印象的だ。直訳すると、「魔法をかけられた(enchanted)」、「(時空的に)遠く離れた(far-off)」、「小さな島(isle)」である。someが付いているので、「魔法をかけられた小島」は、もしかすると「諸島」の一つで、他にも多くの「恋人たちの島」があるのかもしれない。
Serenest skies continually/Just o'er that one bright island smile.ーー直訳風にすると、「あの澄んだ眩しい島の上では/うららかな天空が絶えず微笑みを浮かべてる」。たとえ日常生活でどれ程苦しいことが今後生起したとしても、我々のあの眩しい小さな島の天候は絶えず澄み渡り、快晴であるという「恋愛への讃歌」である。
ポーの詩情は実に繊細で、情緒的である。


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