† ロココ論 †

Black Rococo(ブラック・ロココ)の世界

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 ドイツ式ロココ文化を広めた立役者でもあったアウグスト強健王が愛した色彩として、「クルール・ドゥ・ペルル(真珠色)」と「ブルー・ムーラン(くすんだ青色)」が挙げられる。これらの色の他、薄桃色、クリームと溶け合ったような黄色、薄い緑色などはロココ・インテリアの基調として当時のヨーロッパの宮殿、教会建築で多く用いられ愛好された。18世紀のヨーロッパではまだ「黄金」が神聖な魔力を持つという古い信仰が残存していて、彼らは建築に多くロココ的な麗しい黄金の装飾を施してもいる。
 このページでは、ロココ的な装飾に当時なかなか採用されなかった色彩である「黒・白」を導入すると、ゴシック的な世界にすっかり変身する現象の幾つかの例を御紹介したいと思う。ロカイユ装飾のデザインはそのままにして、色彩だけモノトーンに反転させると、軽妙洒脱にして繊細優美なロココの世界が、高貴さと夜の魔性を併せ持ったゴシックの世界として現前することが明らかになる。このように、ロココは後期バロックの様態として、美術史的にはゴシックよりも数百年後の様式になるわけだが、双方の世界はまるで同じ血を持つ二人の姉妹のように呼応し合っていることが判るであろう。

rococo

 既にロココが過ぎ去りし時代の甘美なメモリアルと化していた時代を生き抜いた詩人ボードレールによれば、ロココとは「死に憑き纏われたメランコリア」に他ならなかった。18世紀ドイツの美学において提唱された美的範疇論でいうところの「優美」の最高形式であるロココ文化は、実はマリー・アントワネットの死に象徴されるように本質的に「宮廷文化の崩壊」を潜在させている、極めてメランコリックな様式でもあるのだ。ロココの色彩を反転させた「ブラック・ロココ(Black Rococo)」とは、まさにこうしたロココの持つ軽快なリズム、優美なメルヘンが、いっそうシリアスで高級な美的世界へと孵化した様態に他ならない。ブラック・ロココの有する上質で耽美的な魅力は、今日のゴシック・リヴァイバルを基調とした多様な文化形式にも多大な影響を与えている。

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black rococo

フランス式ロココベッド 「ブラックロココ」

 2004 - 2013 Juliettes Interiors Ltd
2004 - 2013 Juliettes Interiors Ltd

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【Black Robe à la française(ブラック・ローブ・ア・ラ・フランセーズ)の魅力】


 
Gallerie des Modes, 1781. Grand deuil de cour

 ソルボンヌ大学で美学を学んだ日本を代表する服飾研究家の一人である深井晃子女史によれば、18世紀のレディース・ファッションは大きく三つの時期――(1)レジャンス(2)ルイ15世時代(3)ルイ16世時代――に分けられる。この内、「ルイ15世時代」はスタンダールによれば、「影にいたるまで一切が薔薇色の絵」と呼ばれたほど華麗な衣裳が興隆し、ロココ女性服の典型として後世に認知されることになる「ローブ・ア・ラ・フランセーズ(Robe à la française)」が出現した時期である。ポンパドゥール夫人が宮廷入りし、ロココ文化を保護すると同時に、彼女の大のお気に入りだった宮廷画家ブーシェが、この時期の貴婦人たちを多く描きだしている。
 18世紀フランスの貴婦人たちが夢中になった前衛的なファッション誌である名高い『ギャルリー・デ・モード(Gallerie des Modes)』の1781年のある図版には、我々にとって非常に大切なドレスが確かに掲載されていた。これは今日、「ブラック・ローブ・ア・ラ・フランセーズ」と呼ばれ、ゴシック・ファッションにおける一つの古典的な殿堂として評価されている。このドレスこそ、ブラック・ロココがゴシック・ファッションと相関する最良の代表例であると言えるだろう。因みに、吉田典子氏(神戸大学国際文化学部教授/19世紀フランス文学・社会文化史・視覚文化論)による論稿「ゾラ『獲物の分け前』におけるモード・身体・テクスト」(『身体のフランス文学』八章「空虚と襞」)によれば、フランス語のemplir「満たす(emplir)」には、ドレスの「襞(pli)」という単語が既に入っている。ゾラの描き出したファッションに取り憑かれた女性ルネは、己のle vide de son être(存在の空虚)を満たすものとして、絶えず身体を「襞」で「満たす」ことをするが、そこには「死」へと接続するメランコリアが潜在していた。このカスティリオーネ伯爵夫人(1835-99)をモデルにしたルネの例からも判るように、一見「優美」において研ぎ澄まされたかに見えるロココ文化は、ボードレールが述べたように種子として眠っている「メランコリア」を潜在させているのである。ブラック・ロココの象徴としての漆黒のローブ・ア・ラ・フランセーズは、まさにその中心であると言えるだろう。

Redingote fashion plate from Galerie des Modes
Redingote fashion plate from Galerie des Modes

Portrait of Lady Frances Courtenay by Thomas Hudson, 1741 ルーベンスの妻
Portrait of Lady Frances Courtenay by Thomas Hudson

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goth dress

goth shirt




「参考文献」

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バロックとロココ (叢書・ウニベルシタス)


身体のフランス文学―ラブレーからプルーストまで身体のフランス文学―ラブレーからプルーストまで
(2006/11)
不明

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華麗な革命―ロココと新古典の衣裳展

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