† メディア論 †

これからのWEB社会を知るための基礎概念「オート・ポイエティックシステム」についてーー西垣通『基礎情報学』の地平

  
「基礎情報学について」
 
 


前回、西垣通氏の『基礎情報学』の一段階目のプロトコルを残した。
これから二段階目を書く。
本書は私にとって非常に重要な本で、数多くの発見に溢れている。

情報


1、「情報とは何か?」

それによって生物がパターンを作り出すパターン」である。
この「生物が」という点が非常に重要である。
これは西垣氏の「情報」の定義である。
そもそも、情報informationとは、生命体の内部inに形成formされるもの、という意味なのである。
一言でいえば、「生命体における意味作用」が情報なのである。
第三世代生命システム期に属する西垣氏の定義は、サイバネティクスのパラダイムからグレゴリー・ベイトソンが定義していた情報の意味とは異なる。
ベイトソンは、かつて情報とは、「差異をつくる差異」であると規定していた。

2、「なぜパースがこれほど重要か?」

実は、西垣氏の基礎情報学には、二つの源泉がある。
一つはホフマイヤーの生命記号論で、二つ目は前者の理論的基礎ともなったパースの記号論である。
パースの記号論は、1「記号表現」、2「解釈項」、3「対象」という三項関係によって把握されている。
例えば、「火事だ!」という声だけを耳にした人にとって、その声は1「記号表現」である。
次に、彼が「火事だ!」という記号表現から、家から火がメラメラ燃え上がっている光景をイメージすることは、彼自身の解釈であり、すなわち2「解釈項」である。
このとき、実際に燃えているであろう火事現場の家は3「対象」である。
だが、ここが重要なのだが、解釈項は対象の有無に依存しないのである。
「火事だ!」「凄い火だぞ!」「早く消防車を呼んでくれ!」などという記号表現の連鎖から、彼はイメージの中で現場の有様を多様に解釈していく。
こういった1→2→1…の絶え間ない連鎖プロセスをパースは「仮説推量」と呼んだ。
仮説推量においては、3「対象」が( )入れされている。
つまり、それほど2「解釈項」に自由度が与えられている概念なのである。

パースの記号論は、主観的な心的活動に依拠している。
パースにとって、「世界」とは、「解釈者の中に堆積された意味内容と経験が作り上げるもの」である。
西垣氏は、これをユクスキュルの「環世界Umwelt」と結びつける。
A氏の環世界と、B氏の環世界は差異を持つのだ。

世界を生きる」とは、「世界を予測する」ことである。
つまり、世界にまだ解釈し切れていない「意味内容」が残っているからこそ、人はそれを「解釈」して生きていけるのである。
逆説的にいえば、人は解釈項が全て満たされ完了すると存在できないのではないか?
しかし、パースはこうも述べている。
自然は習慣化する傾向を持つ」と。

ブグロー ギフサイズ


3、「シャノン&ウィーバーのモデル」

情報について理解する上で、上記のパース記号論を学ぶことは必須のようだ。
さて、今一度「情報」を原理的にモデル化しておきたい。

 
A○―――――――――――→●B
 



上の図で、Aは「送信者」、Bは「受信者」、双方を繋ぐ回路は「通信経路(チャネル)」である。
このチャネルに、「ノイズ」が入り込むので、それを除去することが課題であった。
このモデルは「情報」の送り手と受け手の関係を最も簡単に表現したもので、「シャノン&ウィーバーのモデル」と呼ばれている。

4、「シャノンの、情報の加法性について」

情報量」が増えれば、それだけ「意味=価値」は高まる。
この「情報量」については、シャノンが実は「情報の加法性」という原則を表明している。
それによれば、「少しずつ小出しにしようと、一度に全ての情報を込めようと、結果は同一である」というものである。
ベイトソンは情報を「差異をつくる差異」と定義していたが、これに当てはめると、「事象の数」が増えれば増えるほど、「差異の数」も比例して増える、すなわち情報量が増えるというわけである。

5、「ノーレットランダーシュの外情報exformationについて」

我々は会話する時、相手に全てを打ち明けるわけではない。
本音を隠して、建前だけで体裁を取り繕うこともしばしばである。
トール・ノーレットランダーシュは、頭の中で浮かび上がったが、実際に発話されなかった「処分された情報」を「外情報」と呼び、ここにこそ真の意味内容があると規定した。
例えば、身振り手振りだ。
これは、外情報を発話以外の記号表現に「代補」しているのである。

ai kore


6、「シャノン&ウィーバーのモデルの応用」

実は、情報の発信・受信の原理的モデルとして示唆されたシャノン&ウィーバーのモデルは、社会的な「コミュニケーション」の原理としても応用できるのである。

 
A氏○←――――common―――――→●B氏
 



コミュニケーションとは、「ある意味内容がcommon共通になること」である。

7、「ホフマイヤーの生命記号論の場合」

実は、パースの記号論は、生命の進化にまで応用できるようだ。
それをホフマイヤーが生命記号論として案出したのである。
進化」とは、「複数の選択肢の中からあるものを選択する」ことである。
つまり、多様な外的な記号表現から、適切な解釈項を選択することである。
恐竜が絶滅したのは、記号論的に表記すれば、環境の変化という生態系における「記号表現」に対して、恐竜たちが適切な「解釈項」(適応)を選択できなかったからである。
生存に不利な情報は排他される。
つまり、不要な解釈項は絶滅させられる。
ここでも、やはりパースの記号論のあの重要な「二項」が概念化されているのである。

換言すれば、「進化」とは、実は多様な「仮説推量」である。
ホフマイヤーは、生命体の本質として、ルール(宿命)脱ルール(自由)を挙げている。
生命体は、環境の変化という記号表現の変容に対して、独自の解釈項を自己創出しなければならない。
単に自己維持だけに努めているだけでは、多様な環境の変化に適応できないのである。
マシンは、ルールには従えるが、脱ルールには適応するのが難しい点で、まだまだ生命体とは言い難いわけである。

より仔細に述べると、生命システムには、少なくとも三つある。

Aホメオスタシス

自己維持システム。
動的な平衡システムであり、ある環境(記号表現)の変化に対して、決められた適応(解釈項)しか持たない。
すなわち、閉鎖系であり、入力/出力型の古いシステムである。

B自己組織システム

入力/出力と合わせて、「ゆらぎ」という偶然性への適応が可能となる。
自らを創造していくという点で、「創発」とも呼ばれる。
これは動的な非平衡システムであり、1に対して開放系なのである。

Cフィードバックシステム

タデマ3445


8「オート・ポイエティックシステムについて」

前回のプロトコルでもこれについては少し要旨をまとめていたが、ここではオートポイエーシス理論の四つの特性について述べておく。


� 自律性
� 個体性(自己同一性)
� 境界(リアル/バーチャル)の自己決定性
� 入力/出力の不在



基礎情報学では、「生命体」を、「自律的に情報を解釈する存在」を定義する。
つまり、自律的に環境変化という記号表現の変容に対して、独自の解釈項を案出できる単位体である。
その結果として、ヒトがある。

オートポイエーシスの最大の特徴は、�である。
私が今夢を見ているのか、見ていないのかを私は判断できない。
判断できるのは私の外にいる、客観的な「観察者」である。
オートポイエーシス理論においては、「リアルとバーチャルの差異」という古典的なフレームは、そもそも存在しないのである。
その区別は、「観察者」という画期的な新しい概念により、アウフヘーベンされているのである。
そして、「観察者」とは、神でもその他の超越的存在者でもなく、常に「ヒトの心的システム」であると西垣氏は規定している。

情報67



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