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愛のアレゴリーとしての、ロマン・ポランスキー『赤い航路』


赤い航路 《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [DVD]赤い航路 《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [DVD]
(2012/12/21)
ピーター・コヨーテ、エマニュエル・セニエ 他

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地中海を航海する豪華客船を舞台に、二組の夫婦の奇妙な交流を描く人間ドラマ。監督・製作は「フランティック」のロマン・ポランスキー。エグゼクティヴ・プロデューサーはロベール・ベンムッサ。パスカル・ブルックナーの小説Lunesde_Fielを基に、ポランスキーと「愛人 ラマン」のジェラール・ブラッシュ、ジョン・ブラウンジョンが共同で脚色。撮影は「インテルビスタ」のトニーノ・デリ・コリ。音楽は「1492 コロンブス」のヴァンゲリスが担当。主演は「殺しのアーティスト」のピーター・コヨーテ、ポランスキー監督夫人でもある「フランティック」のエマニュエル・セニエ、「モーリス」のヒュー・グラント。
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 抱き合っている場面で海を髣髴とさせるメロディーが流れるのが叙情的で素晴らしい。一人の老人が船上で過去を物語るという、バルザックの短編でもよく見られる手法だが、インスピレーションとしてこの老人オスカー・ベントンのモデルにはヘンリー・ミラーが当てられているようだ(映画中では作家を目指してパリに滞在している男という設定)。運命的な愛を描いているようでいて、ミミとの危険な関係から窺えるのはグロテスクなまでに歪んだ倒錯の嵐である。語られているのが船上(現在)であるということが、どこか閉じられた愛欲の世界を感じさせ、同時にこの老人の語る話が一つの現実を虚構化した「物語」であったようにも感じさせる。最後まで観て感じたのは、悲劇的なのか喜劇的なのか判断し辛い作品で、少々ラストの収束感が弱いという点だろう。主題的にはベルトルッチの『ラスト・タンゴ・イン・パリ』に近いものを感じた。
 この映画も広い意味で恋愛映画の一つだろうが、映画で往々にして描き出される愛はド・マン的な意味でアレゴリカルなものが多い。つまり、出会ったばかりはお互いに運命的に惹かれ合い深く愛し合うが、いつしかその愛が「別の何か」に変容していく。本作ではそれが依存的な屈折した性的関係として描かれている。特に印象的だったのは、二人が野原でピクニックしている遠景に若い別の男女が映し出されている場面だ。愛し合う見知らぬ恋人たちは、オスカーとミミがパリで出会ったばかりの相思相愛の図であり、近景にいる現在の彼らの予兆になっている。海のうねりの持つ躍動感のように、この二人は愛欲の絆の内に破滅を内包している。それをポランスキーが仮に「芸術家の資質」として理解しているとすれば、おそらく芸術それ自体を誤読していることになるだろうが、私にはむしろこれは現代社会とは無縁な、もっと原始的で太古の時代を生きた男女の物語であったように感じられる。


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