† 映画 †

『モスダイアリー』――無数の蛾と鮮血に彩られたリリー・コールが放つゴシック的な美学


モスダイアリー [DVD]モスダイアリー [DVD]
(2013/12/13)
リリー・コール、サラ・ガドン 他

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 いわゆるゴシック映画である。ミステリアスな転入生の少女、曰くありげな学校の地下階段、無数の蛾の幻影、相継ぐ親友たちの謎めいた死……『カーミュラ』や『ドラキュラ』に通底するゴシック文学の色調が本作には採用されているし、事実映画内に登場するヒロイン想いの教師はゴシック文学について教えている。そういうテーマでも読めるし、あるいは素朴にハイティーン時代の友人関係の齟齬、決壊などといった誰しもが何らかの形式で一度は通過してきたテーマからでも解釈できるだろう。主人公の少女は日記を書いているが、これがいわば映画内でモノローグの機能を果たしている。特に図書室や深夜の窓辺で本を読んでいる場面には、この映画の制作者たちが読んでいるであろうゴシック文学の雰囲気がよく表現されていた。
 「モス・ダイアリー」とは何か? それは主人公が綴っている日記のことではない。これはむしろ、転入してきた神秘的な少女エネッサが、おそらく不幸な死に見舞われる前まで書き綴っていたであろう書簡を指しているのではないだろうか? ヒロインはその手紙を学校の地下室の棺の中で見つける。ゴシック文学においては、「城」にせよ「塔」にせよ「屋敷」にせよ、常に物語の鍵となる秘密は〈地下空間〉に隠蔽されており、これがストーリーが流れるに連れてヒロインによって開示されるという構造を持っている。そこでヒロインはエネッサの正体を知ることになるが、だとすれば「蛾」とは何だったのだろうか? 主人公は彼女の分身でもあるかのような数知れない蛾を見ているだけに、これは気掛かりである。
 なぜ、蛾なのか? その理由の一つとして考えられるのは、エネッサを演じた若いファッションモデルのリリー・コールの特異な容姿にこそ求められる。動いている映画中の彼女を正面から見れば判るだろうが、彼女は我々日本人から見ても万人が同意するような美形モデルではない。むしろ、VOGUE誌のコレクション色の強いポスターに起用されるような独特かつ個性的な美を体現した女性である。驚くべきその丸顔、長い黒髪、そして仏蘭西人形のように人工的な装飾性を感じさせる際立って美しい瞳……そう、この映画のエネッサを一言で形容すれば、それは「無数の蛾と共に暮らす妖艶な少女人形」である。モデルだけあって足は長いが、顔のあまりの人形性に、むしろ低い身長をイメージさせる程である。それ程、この映画は実はリリー・コールの時々見せる容貌のある種の「奇怪さ」、「不気味さ」、そして「妖しさ」の美学に貫かれている(おそらく斜視が若干入っていることが、彼女に稀有な高貴さと哀愁を同居させているのだ)。
 低予算で制作されているため至らない点も見受けられるが、ゴシック的な世界観を愛する方は一度観ると新たな気付きを得るはずだろう。蛾と鮮血に彩られたリリー・コールの人形的な美を知りたい方は必見である。







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