† 詩集 †

詩 『 facticité 』





少年がテーブルの上の林檎を虚ろに眺めている
彼がその表面を指先で撫でる
指を弾くと林檎はテーブルの上を転がり始める
際まで達した林檎はどうなるだろうか
君は床に落下すると言うだろう
それこそがカントを盲いさせた罠だった

林檎は落下するかもしれない
だが宙に浮遊するかもしれない
破裂するかもしれない
穴が開いてそこから別の宇宙が見えるかもしれない
物事がこうなるという絶対的な保証など存在しない

明日にでも世界は終わるだろう
だが同じように世界は明日も平穏に続くだろう
物事は常に別様にデザインされる可能性を秘めている

神はどこにいるのだろうか
神は今君の後ろにいるかもしれない
かつてそこにいたのかもしれない
そしてこれからやって来るのかもしれない
神とはまさにこの別様である可能性そのものである

少年と林檎はどうなっただろう?
林檎は確かに床に落下した
君の言ったとおりになった
だが少年はどこにもいない
彼ははじめからいなかったのだ
あるいは先刻消えたばかりだ
あるいはテーブルの下に隠れているだけだろう
彼の存在もまた別様である可能性そのものである




(2016/2/16)



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