† 小説草稿 †

ヨハネの少年時代





 洗礼者聖ヨハネ


 これは、洗礼者聖ヨハネがまだナザレのイエスに洗礼を与える前の、彼が少年時代だった頃の出来事である。幼きヨハネはこの当時、ユダヤ教エッセネ派の長として知られ、信徒たちから「義の教師」と呼ばれるエリアフの共同体に入っていた。ヨハネは当初、エルサレム神殿の大祭司の一人であった父親ザカリヤと母親エリザベツの勧めに従い、自らも将来的にはこの神殿の祭司の使命に与るものであると考えていた。だが、ある時、少年ヨハネが神殿の中庭に生えていた一本の大きな樹の幹でふと体を休めていると、眼の前に大天使ガブリエルが現れてこう言った。
「あなたは荒野に出なければなりません。そこであなたはエッセネ派の長老エリアフの教えに従い、真の使命をまっとうするのです。エリアフの口を通じて、私は再びあなたに神の言葉を御伝えするでしょう」
 少年ヨハネは初め、これは夢ではないかと感じた。だが、ガブリエルが中庭から立ち去った後、昼下がりの青空の裂け目から天上のエルサレム神殿が薄らと浮かんでいるのを目の当たりにして、これは自分に与えられた託宣であることに気付いた。そして、その日の夕方、ヨハネは父ザカリヤと母エリザベツに、このことを話した。元々、ザカリヤも大天使ガブリエルの託宣を受け、それを忠実に守ったことでエリザベツの体にヨハネを授かったということもあって、我が子のこの神妙な知らせを重く受け止めた。
「お前が聞いた神の御言葉のままに」
 ザカリヤとエリザベツは、まだ十五歳にも満たないヨハネを強く抱き締めながらそう言った。
 翌朝、ヨハネはエリアフを探して荒野へと旅立った。







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