† 文学 †

「世界はもう原初には戻らないだろう」--ル・クレジオ『PAWANA』に描かれた海の楽園

パワナ くじらの失楽園パワナ くじらの失楽園
(1995/05/26)
ル・クレジオ

商品詳細を見る




最近の私は、ル・クレジオの作品が持っている「海」や「大地」、都会的風景から連れ去ってくれるような世界に惹かれ続けています。
この作品は40分もあれば読了してしまうほどの短編小説ですが、非常に優れた作品でした。
是非このページで紹介したいのが、メスの鯨たちが何千と集まり、海の秘密の聖域で出産するという伝承です。
これは実際に作中で登場し、冒頭で神秘的なその宇宙論的光景が語られます。
私はこれを読んだ時、何か「創世記」の新しい局面を、より正確にいえば、「全く異なる創世記」に触れた気がしました。
クレジオは一神教をテーマにしていませんが、もしかすると「創世」的な光景の場を求める、原初回帰の傾向が彼の心理に働いているのかもしれません。
この作品では、「文明」が「男性原理」として描かれて、「自然」が犯される「女性原理」として象徴化されています。
クジラはその具現化ですが、19世紀初頭に絶滅してしまったナティック族というインディオの女性との一夜の情熱なども、やはり「大地」を「女性原理」として捉える彼の心理を読み解く鍵になるでしょう。

いずれにしても、クレジオの作品には「ガイア思想」的なテーマがあります。
彼のメッセージを信じて、実際に野生へ戻ることなどはできませんが、それでも作品から漂う「自然の創世記」に、私はどこか安らぎを感じることができます。

短いので、普段忙しい方にも推薦できます。


関連記事
スポンサーサイト
*Edit TB(0) | CO(0)



~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


Back      Next