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香水の系譜学/パフューム・ジェネアロジー

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(2010/03/12)
ロジャ・ダブ

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以前から、ファッションにおけるフレグランスの歴史について強い関心があり、今回私の敬愛しているクリスチャン・ディオールの「香水」について調べてみました。

まず、「香水」とは何であるか?
ある調香師の美しい言葉を引用すれば、それは「女性そのもの、女性の反映」です。
数々の歴史に名を残した調香師たちは、一人の女性として、香水というものを世に送り出しました。
ある方は、女性に対して非常に強い衝撃を受けた時に、それを表す手段は、私には香水をおいて他にないと断言したほどです。

もともと、香水の起源は古代ギリシアや、クレオパトラの時代にまで遡行します。
クレオパトラの時代は、天然原料の香水の最盛期であると考えられています。
興味深いことに、西欧において広まった、いわゆる「ローズウォーター(バラ油)」の発明者は、かの哲学者アヴィセンナであり、彼がアルコールを発明したさいの副産物として生み出されたといわれています。
バラ油というのは、キリスト教世界における「香水のジェネアロジー(系譜学)」を知る上で、重要な存在です。
それから、ハンガリー王妃エリザベトが錬金術師に作らせたといわれる、「ハンガリアンウォーター」なども登場します。
これは20世紀まで作られた香水です。
「香水」にまつわるエピソードを持った歴史上の人物はクレオパトラを含め、数知れないですが、その中でも筆者が特筆しているのが、かのルイ14世です。
彼の別名は、「甘美な香りの王」。
パフュームマニアとして名高い彼は、自らの服装に馥郁たる香りをまとわせました。
この、ファッションと香りの結合形式は、後にイヴ・サンローランに受け継がれます。

洒落者の国、イギリスでは17世紀にジャコウ猫の分泌物から香料を取りました。
この香料は、身嗜みに敏感な紳士たちにとっての、いわば「礼儀作法の一つ」であり、つけることが望ましかったことはいうまでもありません。

ざっとこうして概略しただけでも、「香水」というのは、女性らしさであるだけでなく、男女の差なく「気分を高めるもの」であり、「地位の主張」でもあり、社会的に重要な役割を担ってきたわけです。

近代香水の父祖とされるのは、フランスのブティックであるウビガン社が作った「フジェールロワイヤル」(1882年)だとされています。
この7年後に、同じくフランスのジャック・ゲランが名香「ジャッキー」を作ります。
愕くべきことに、近代香水の礎を築いたのは皆、フランスの卓越した調香師です。
フランスが、あらゆる文化、ファッションの総合的発信基地だという確信は、ますます深まります。



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さて、香水の原料というのは、実は良い香りのする植物が大半です。
ただし、これは天然香料の場合で、20世紀以降では合成香料も用いられてきました。
天然香料のランクにも、もちろん、下から上まで様々あるわけですが、一例をあげると、ジャスミン、月桂樹、シナモン、カモミール、ミルラなどがあげられます。
これらは、普段から馴染みのある植物だと思いますが、天然香料の中で最高級として筆頭にあげられているのが、いわゆる「竜涎香(アンバーグリス)」です。
このアンバーグリスは、金の価値のおよそ30倍だといわれております。

よく、オーデコロンやオードトワレの違いが何か迷うことがありますが、これらは揮発性の違いによって区別を設けています。
香水には、大きく分けて四種類あります。

・パフューム(香水)
・オードパルファン
・オードトワレ
・オーデコロン



要するに、肌にどれくらいの時間、香りが残る性質があるか、どれだけ蒸発せずに維持できるか、そのタイプによって名前が変わります。
当然、揮発性の低いパフュームが、本格的な香りを愉しむための香水です。


画       像 041

さて、ようやくディオールの香水の出番になりました。
まず、こちらです。
これは「MISS DIOR」(1947)。

バカラクリスタル製のボトルを使用しているそうです。
バカラ、というのは、香水のボトルを美しく仕上げる一流の会社ですね。
この香水は、香水史の中でも、そして国際的な調香師たちの中でも、「名香」として知られています。

画像 04        2

続いて、「DIORISSIMO」(1956)。
「ISSIMO」とは、「とっても」という意味のイタリア語です。
つまり、この香水の意味は、まさに「とってもディオール」。
この香水は、おそらくディオールの歴史にとっても極めて重要な意義を帯びています。
というのは、初代ムッシュー・ディオールは、この香水をスズランの花からインスパイアされたものとして作りました。
スズランという花は、ディオールの棺の中で飾られたほど、彼が愛した花です。
この香水も、ディオールが逝去される一年前に完成しました。
だから、この作品は香水部門における、初代の遺作、とも考えられるでしょう。


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「DIORELLA」(1972)


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「POISON」(1985)。
これは、当時のファッション業界にセンセーションを放った傑作だといわれています。
当時のディオールは、いわば革新的なプランで事業を推し進める上で悩みを抱えておりました。
そうした困難を打破する、「衝撃」として、それまでの「上品な官能性」と変わって、「毒」のあるような刺激的な香りを主張したといいます。
プワゾンという名が示すとおり、これは「毒リンゴ」であり、魔性の香り、というわけですね。


他にも、シャネルやバレンシアガ、そして香水を知る上で欠かせないゲランの名高いコレクションなど、本書には魅力が満載でした。
また次の機会に、それらについても紹介しようと思います。
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~ Comment ~

智様☆

去年、大分にある香りの博物館に行ってまいりましたが数え切れぬほど貴重な香水が展示してありました。

瓶のデザインや調香師のレベル物語でいえばゲランは本当に素晴らしいものですが日本の環境では少々きつい匂いかと思われます。私はフランスの庭園を想わせるジャルダンバカテールを持っておりますが冬の寒い時期だけワンプッシュ腰につける程度です。
ミツコという香水は グーテンホーフ光子をイメージしたと云われておりますが、偶然にも私の大叔父(明治の文豪でした)が光子の書物も書いておりましたのでシンパシィを感じております。

ゲランの中では千夜一夜からインスピレーションを受けたナエマと サンテクジュペリの夜間飛行が好きです。

私が一番愛用している香水はアニックグタールですが、調香師は元音楽家でしたので匂いの中に美しい旋律が聴こえ映像が見えてきます。バカラデザインの瓶にゴールドのキャップとリボンがとても素敵でいくつか集めています。

Bond No9の香水もとても素晴らしい調香です。

天然香料の香水は種類が多いので 毎日の気分や衣装に合わせて使い分けることができます。

最近は 少し秋の匂いを感じてきましたのでチュベローズ系の匂いをまとっております。

[2012/09/11 15:28]  Sacco  URL  [ 編集 ]

*敬愛するSacco様へ*

*Sacco様へ*

返信が大幅に遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
昨夜、貴女様の影響でティクヴァの映画『パフューム』を観て、大変な感銘を憶えた私にとって、貴女のように素晴らしい香水の見識を持った女性には本当に敬愛の念が沸き起こります。
「フランスの庭園を想わせるジャルダンバカテール」、ぜひ私も一度その匂いをかいでみたいと思いました。
貴女からの感化を受けて、イギリス庭園について学習している私にとって、とても興味深い香水です。
また、以下の文章には『パフューム』の主人公である、あの傑出した調香師に近いオーラを感じました。

「私が一番愛用している香水はアニックグタールですが、調香師は元音楽家でしたので匂いの中に美しい旋律が聴こえ映像が見えてきます。バカラデザインの瓶にゴールドのキャップとリボンがとても素敵でいくつか集めています」

そういえば、ティクヴァの作品でも「香り」を「音楽」に、あるいは「映像」に相関させておりましたね。
香水学は非常に奥が深く、貴女様が心から愛しておられる理由も本当によく理解できます。
今後も私は貴女様の存在を意識して、奥の深い(*貴族的な*)文化について学習していく所存でございますv-254
[2012/09/18 23:17]  satoshi  URL  [ 編集 ]















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